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おいしさブログ

おいしいお菓子について、こだわりの素材についてのお話

楽花生パイのお話⑦

今回はいよいよオランダのパイ生地の製造会社訪問のお話に入ります。

その会社は、アムステルダムの空港から車で1時間半くらい南に向かった閑静な田舎町にありました。とても清潔感のある会社と工場で、エントランスに日本の旗とオランダの旗とその会社の旗をなびかせて歓迎してくれました。
工場には試作室が用意されていて、一緒に試作をしてくれるスタッフが待っていてくれました。

ちょっと脱線しますが、つくづく感じたのですが、オランダの方(女性も男性も)は本当に背の高い方が多いですね。はるかに見上げる方ばかりです。脱線は以上。

試作室には既に小麦粉とバターがそれぞれ数種類ずつ用意されていました。
パイ生地の原材料は、今までもお話してきましたが、バターと小麦粉と水に少々の塩のみです。したがって選定する材料は小麦粉とバターがメインいうことになります。味に大きく影響するのはもちろんバターです。ですからバターの選択が一番重要ですね。

ところが、この会社は私達のための小麦粉の選定にたいへん苦労したそうです。なぜならヨーロッパ産の小麦は灰分(ミネラル分)が多く、日本で主流になっている北米産の小麦とは性質が違うからだということです。それでも一番日本の小麦粉の規格に近いものを選んでくれていました。バターについては私が最も期待していた発酵バターが用意されていました。

いよいよ選定の段階に入ると、小麦粉については、あまりこだわらず、もっともパイに適した、日本の規格に近いもの、いわゆる“おすすめ”を選ぶことにしました。一方バターについては徹底的に味にこだわりました。
実は彼らの関連会社はバター製造会社でしたので、当然そのバターも選択候補として揃えられていました。しかし、私達が最終的に選んだバターは違う会社のバターになってしまいました。

それでも彼らは一切その件にこだわらず、私達の選択を尊重してくれました。彼らが言うには、私達の選んだバターが結果的にやはり彼らも高く評価していたバターだったそうです。実際試作担当者は個人的に彼の最もお勧めだと言っていました。

彼らはオーダーメイドのパイ生地製造を旨としているので、常に顧客側の意向を最優先にするスタンスを取っているそうです。したがって、たとえバターが(今回そのとおりになってしまいましたが)関連会社のライバル企業のものであっても、あくまで、顧客が満足する生地を製造することが彼らの使命、役割りと捉えているということです。
割り切っていますね。またライバル会社もよく融通しますよね。とても大人の考え方、対応だと思い、彼ら(ライバル会社も含めて)のビジネス感覚に感心してしまいました。

さて、バター選びの話に戻りましょう。その際、私達は味を中心に選んでいました。ミルクの味がしっかり出ていて、風味が良く、滑らかで、発酵によるさわやかな酸味がとても新鮮で、とてもおいしかったです。しかし、パイのバター選びはそれだけではなく、パイの製造に適した性能を兼ね備えていなければなりません。

この性能に関しては次回お楽しみに。



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