おいしさブログ

おいしいお菓子について、こだわりの素材についてのお話

楽花生パイのお話⑩

今回は私達のパイに使用されているバターの2つの優れた特徴についてお話をするということで、前回は終わっています。
ごめんなさい。その2つの特徴については既に前々回お話していましたね。
今回はなぜそのような特徴を備えることができたのかということをお話して行きたいと思います。

少しだけ復習ですが、1つめの特徴は伸び(延転性)が良いということでしたね。
確かにパンにバターを塗ったときにググッと伸びてくれると嬉しいですよね。食感もネチッと粘った感じでいかにもおいしそうに感じませんか。

そしてもうひとつの特徴は、溶け出し温度(メルティングポイント)が高いということでしたね。
一般のバターに比べて2℃ほど高いそうです。この2℃の違いというのはバターとしてはかなりの特徴だそうです。このことは、口の中でバターの風味を感じている時間が長くなるということにつながります。
ですから楽花生パイを召し上がった際に、中の落花生餡やパイ生地の口どけが非常にまろやかに感じていただけるはずです。
それはいつまでもバターの風味が口の中に残ってくれているからなんですね。
すごいですね、このバター。私は本当にこのバターに惚れ込んでしまいました。

さて、それではどうしてこのようなバターができるのでしょうか。
その担当の方からの説明によりますと、牛さんに与える餌をたいへん研究しているそうです。もちろんあくまでも自然由来の餌です。
その情報やアドバイスは契約している各生産農家に伝えられます。農家はそれに従い、結果としてこのバターに適した乳質の牛乳を生産し、この工場からはこれらの農家にタンクローリーで収集に回っているそうです。

私が驚いたのは、この会社は各生産農家の全ての牛の健康状態をコンピューターで管理し、一頭ごとに血統や病歴、そして乳質の変化等の状況を把握し、的確な餌のアドバイスや健康管理のアドバイスをしているそうです。
まさに農家と一心同体となり、お互いに協力し合って優れた品質の製品を生み出しているのです。
すごいですねー。そこまでやるのかと驚きました。

後日この会社と契約している農家を紹介していただき、お邪魔する機会を得ました。その農家はオランダの酪農家として、たいへん高い誇りをお持ちの方達でした。酪農歴400年という伝統ある農家だそうです。彼らが言うには、オランダの酪農はたいへん古くから盛んで、周りの国(フランス等)にノウハウをいろいろ教えてあげたということです。
現在でも代表的な乳牛として知られているホルシュタイン種はオランダが原産だということです。

そういえば江戸時代、日本に初めて酪農を伝えてくれたのもオランダ人でしたね。それもなんと千葉県の峰岡牧場というところで伝えられたということです。峰岡牧場は今でもそのころの歴史等を資料館として公開しています。皆さんも是非訪ねてみてはいかがでしょうか。千葉とオランダとオランダ家、ご縁がありますね。

さて、次回はこのバターを使ってどのようなパイ生地にしたかを報告します。


オランダ家味の門番より



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楽花生パイのお話⑨

さて今回は当社のパイ生地のバターについて詳しくお話することになっていましたね。
私はこのお話をするときに、いつも感じてしまうのですが、オランダの乳製品に対するこだわりと酪農の歴史と伝統の厚みです。
 
それではバターメーカーにお邪魔した際のお話に戻りたいと思います。
そのメーカーは日本の乳業メーカーもそうですが、農家から牛乳を仕入れてその原乳をもとにバターだけでなく、いろいろな乳製品を製造しています。
私がお邪魔したのは、その中のバター工場でした。その工場では、バターだけでも数種類作っています。とはいってもバターですからマーガリンのように植物油脂を加えたりはしていません。牛乳だけを原料に製造されています。また発酵バターが主流になります。

以前にもお話したかもしれませんが、ヨーロッパのバターは発酵させることが当たり前です。発酵させないバターはもちろん作ることができますが(発酵工程が省かれるだけなので)、彼らにとってはバターとしては認めたくないものらしいです。発酵工程は長い酪農と乳製品製造の歴史の中で培われてきた大切な味作りの一環なのですね。
私達日本人も発酵食品が大好きですので、皆さんもよく理解できると思います。

さらに、この工場を訪問した際に初めて耳にして驚いたのですが、オランダでは夏の牛乳で作る夏バターと、冬の牛乳で作る冬バターと大きく2つに分けて作られています。なぜかというと牛さんが食べる餌の性質が全く違うからだということです。

夏は放牧され、生の草を中心に食べます。そして冬の間は牛舎にいて、干草を中心に食べます。
すると夏の牛乳は生の草の影響でカロチンや水分が多くなります。その牛乳をバターにすると、カロチンのおかげで黄色身を帯び、水分が多いので、冬と比べて脂肪分が少なく、柔らかいバターになります。パンなどにはとても塗りやすいですね。また味わいも生の草の影響で複雑な味わいが楽しめます。とてもおいしいですよ。
したがって、クッキーなどいろいろな原材料を利用した生地には夏バターを使用したほうが向いているということです。

いっぽう冬バターは干草を中心に食べるため、カロチンの影響が少なく、色が白く、水分も少ないため脂肪分も多くなります。味わいは雑味がなく、とてもピュアーでさわやかな乳酸菌の風味が楽しめます。こちらもまた、とてもおいしいです。パイ生地のように生地そのものにいろいろな材料を混ぜないで、バターの風味そのものを楽しむ生地には、冬バターが向いているということでした。

奥が深いですね。夏と冬のバターを別物として扱うことは彼らにとって当たり前のことでした。日本のバターについてはこのような扱いはされていません。ただただ驚くばかりでした。
もちろん私達が選んだバターは冬バターです。

今回は夏バターと冬バターのお話で一杯になってしまいました。ごめんなさい。
前回からお話している2つの優れた特徴については次回にさせていただきます。             


オランダ家味の門番より 




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楽花生パイのお話⑧

今回はオランダでパイ生地の試作をした際に選択したバターのお話の途中からでしたね。
私達はおいしさを中心に選んでいたのですが、実は私達が選んだバターは、パイ生地との相性としても大切な2つの性能において最高点だったそうです。

その性能とは、伸び(延転性)が良く、解けにくいという特徴のことです。この点も秀逸だということでした。
この性能についてお話しをして行きたいと思います。

まず一つ目の伸び(延転性)についてですが、パイ生地というのは皆さんもご存知のとおり、小麦粉と水を混ぜた生地とバターが重なって層になる形状にできています。
作り方は、バターを生地でつつみ、麺棒で伸ばしては折りたたみ、また伸ばしては折たたむというという作業を繰り返してできています。麺棒で伸ばす際にバターがブツブツちょん切れてしまっては具合が悪いですね。したがって伸ばされても切れない粘りというか、要するに伸びのよさ(延転性)が必要なのです。
確かにそのとおりですね。作り手にとってはとても助かる大切な性能です。

さてここで、またちょっと脱線させていただきます。
私はこの作り方を発想したパイ生地の発明者は天才だと思っています。どこからこのような発想が出てきたのでしょうか。焼きあがった際のサクサクとした食感、そして口の中で広がる豊かなバターの風味。想像するだけでもよだれが出てきそうですね。
できることならお会いして教えていただきたいものです。

すみません、元の話に戻ります。
このバターのもうひとつの優れた性能である「解けにくさ」についてですが、これは焼きあがったパイを食べ、その口どけを味わって初めて理解できました。
この点については、作り手にとってはもちろんですが、むしろ食べる側にとって、とても大切な要素になります。

何度もお話してきましたが、パイ生地の原材料は小麦粉、水、塩少々といったとても単純なものです。したがって食べた際に口の中に広がるのは、バターの風味とサクサクとした生地の食感です。
ところが、口解けの点においては、バターのほうが先に口の中で溶けてしまいます。なぜならバターは溶け出す温度が低いため、口の中の温度で簡単に解けてしまうからです。
しかし、バターだけが先に溶けてしまうと、モゴモゴと生地だけが口の中に残り、後味がいまひとつということになってしまいます。
したがってパイというお菓子としては、バターと生地ができるだけ同じように口解けをしてくれたほうがおいしく感じます。

このバターはその溶け出す温度(メルティングポイントというそうです)が一般のバターよりも2℃程高いそうです。もちろん変な化学的製造をしたわけではなく、あくまで純粋なナチュラルバターです。すごいバターですね。

実はその翌年にこのバターメーカーにお邪魔し、お話を聴いたのですが、この伸びの良さと、解けにくさについては、絶対の自信をもたれていました。
このバター作りのお話については今後お話をして行きたいと思います。  

オランダ家味の門番より




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楽花生パイのお話⑦

今回はいよいよオランダのパイ生地の製造会社訪問のお話に入ります。

その会社は、アムステルダムの空港から車で1時間半くらい南に向かった閑静な田舎町にありました。とても清潔感のある会社と工場で、エントランスに日本の旗とオランダの旗とその会社の旗をなびかせて歓迎してくれました。
工場には試作室が用意されていて、一緒に試作をしてくれるスタッフが待っていてくれました。

ちょっと脱線しますが、つくづく感じたのですが、オランダの方(女性も男性も)は本当に背の高い方が多いですね。はるかに見上げる方ばかりです。脱線は以上。

試作室には既に小麦粉とバターがそれぞれ数種類ずつ用意されていました。
パイ生地の原材料は、今までもお話してきましたが、バターと小麦粉と水に少々の塩のみです。したがって選定する材料は小麦粉とバターがメインいうことになります。味に大きく影響するのはもちろんバターです。ですからバターの選択が一番重要ですね。

ところが、この会社は私達のための小麦粉の選定にたいへん苦労したそうです。なぜならヨーロッパ産の小麦は灰分(ミネラル分)が多く、日本で主流になっている北米産の小麦とは性質が違うからだということです。それでも一番日本の小麦粉の規格に近いものを選んでくれていました。バターについては私が最も期待していた発酵バターが用意されていました。

いよいよ選定の段階に入ると、小麦粉については、あまりこだわらず、もっともパイに適した、日本の規格に近いもの、いわゆる“おすすめ”を選ぶことにしました。一方バターについては徹底的に味にこだわりました。
実は彼らの関連会社はバター製造会社でしたので、当然そのバターも選択候補として揃えられていました。しかし、私達が最終的に選んだバターは違う会社のバターになってしまいました。

それでも彼らは一切その件にこだわらず、私達の選択を尊重してくれました。彼らが言うには、私達の選んだバターが結果的にやはり彼らも高く評価していたバターだったそうです。実際試作担当者は個人的に彼の最もお勧めだと言っていました。

彼らはオーダーメイドのパイ生地製造を旨としているので、常に顧客側の意向を最優先にするスタンスを取っているそうです。したがって、たとえバターが(今回そのとおりになってしまいましたが)関連会社のライバル企業のものであっても、あくまで、顧客が満足する生地を製造することが彼らの使命、役割りと捉えているということです。
割り切っていますね。またライバル会社もよく融通しますよね。とても大人の考え方、対応だと思い、彼ら(ライバル会社も含めて)のビジネス感覚に感心してしまいました。

さて、バター選びの話に戻りましょう。その際、私達は味を中心に選んでいました。ミルクの味がしっかり出ていて、風味が良く、滑らかで、発酵によるさわやかな酸味がとても新鮮で、とてもおいしかったです。しかし、パイのバター選びはそれだけではなく、パイの製造に適した性能を兼ね備えていなければなりません。

この性能に関しては次回お楽しみに。



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楽花生パイのお話⑥

いつもいつも遅くなってしまい申し訳ありません。
このところブログ担当の女性(あゆ葉さん)もお忙しいせいか、あきれているせいか、とても静かにされています。そのうち爆発でもされてはいけませんので、本日も一生懸命書かせていただきます。
 
さて、今回は、オランダ大使館からJETROさんに「パイ生地を扱ってくれる会社を紹介してほしい」というメッセージが届いたところからのお話ですね。フランスの会社とのやり取りで、かなり時間を要してしまい、あせっていたところでした。

とは言うものの、ちょっと脱線ですが、フランスの会社とのやり取りも、実はなかなか楽しいものでした。
相手方の担当者が女性の方でジョークも上手で、メールの交換がまるで文通をしているようでした。どんな方なのか想像してみたりして、お互いに楽しいメール交換でした。
話が進めば、いずれお会いできたかもと思うとちょっと残念です。
 
オランダの話に戻りましょう。
JETROの担当の方が大使館からの依頼を伝えてくれました。オランダは酪農の国であるし、きっとバターもおいしいのではないか。また当社の社名がオランダ家だということからも、何か縁があるのかもしれないと思い、是非取りついでもらうことにしました。
 
すると翌日にはオランダの会社からメールが入り、丁寧な挨拶とこちらの要望内容を教えてほしいとのメッセージがありました。
こちらもすぐに製品内容(発酵バター使用の条件や配合内容)や年間予測使用量等を伝えると、早速、製品については問題なく製造できるということと、見積金額の提示もありました。そして是非取引をしたいとの返事をもらいました。
非常に早いレスポンスと、見積り金額にとても誠意と熱意を感じました。

そこでいよいよ詳細の話を進めようとしたところ、「是非オランダに来てほしい。試作室もあるので、そこで、希望に沿う小麦粉や発酵バターをそれぞれ数種類ずつ用意しておくので、一緒に開発しましょう。工場も是非見てほしい。」という申し出がありました。
相当の気合ですね。こちらも気合が入っていたのでお互いに一気に盛り上がった感があります。
 
いよいよ夢が実現できるかもしれないという期待を胸に社長(当時私は社長ではありませんでした)や幹部に相談したところ、全員が賛成してくれて早速訪問することになりました。
 
今回はここまでとします。その後のことは、また次回お話します。



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